「エンジニアとして働いているのに、思ったより給料が安すぎる…」と感じていませんか。
インターネット上では華やかなイメージがある一方で、自身の待遇とのギャップに悩む声も少なくありません。
その感覚は、一部で言われるように夢見すぎなのでしょうか。
あるいは、日本の技術者は給料が安いという現実の表れなのでしょうか。
この記事では、客観的なデータに基づき、エンジニアの給料の平均や、より実態に近い年収の中央値を明らかにします。
また、代表的な職種であるSEの年収や、エンジニアで年収400万のレベル感についても具体的に解説します。
さらに、エンジニアで一番稼げる職種は何か、そして具体的な給料上げ方まで、あなたのキャリアプランに役立つ情報を提供します。
現状を正しく理解し、収入アップへの一歩を踏み出しましょう。
記事のポイント
- エンジニアの給料に関する客観的な平均年収と中央値
- エンジニアの給料が「安すぎる」と感じられる具体的な理由
- スキルレベルと年収の相関関係
- 給料を上げるための具体的なアクションプランとキャリアパス
エンジニアの給料は安すぎ?データで見る実態
- その感覚は夢見すぎ?リアルな声
- 日本の技術者は給料が安いという現実
- エンジニアの給料、平均はいくら?
- よりリアルな年収、中央値での比較
- 代表的な職種、SEの年収水準
- なぜエンジニアの給料が安すぎと感じるのか
その感覚は夢見すぎ?リアルな声
「エンジニアになれば高収入」というイメージが先行する一方で、現場からは「夢見すぎだ」という厳しい声が聞こえてくることがあります。
この意見の背景には、いくつかの要因が考えられます。
一つは、プログラミングスクールやインフルエンサーによる広告の影響です。
「未経験から3ヶ月で年収〇〇万円」といった魅力的な言葉が、エンジニアという職業への過度な期待を生んでいる側面は否定できません。
しかし、実際の業務では単にコードが書けるだけでなく、チームでの協調性や問題解決能力、そして継続的な学習意欲が求められます。
また、一部の経験豊富なエンジニアが、自身の経験からくる「優しいお節介」として、仕事の厳しさを伝えようとしているケースもあります。
彼らは、安易な気持ちで業界に入り、理想と現実のギャップに苦しんで早期に離職してしまう人を減らしたいと考えているのです。
一方で、現状維持バイアスが働き、新しい人材が増えることによる自身の立場の変化を恐れて、意図的にネガティブな情報を発信するケースも存在します。
このように、「夢見すぎ」という言葉は、さまざまな意図が絡み合って使われているため、その背景を見極めることが大切です。
日本の技術者は給料が安いという現実
「日本の技術者は給料が安い」という話は、海外と比較した場合にしばしば指摘される点です。
実際にデータを見ると、その傾向は明らかになります。
経済産業省が発表した「IT人材に関する各国比較調査結果報告書」によると、日本のIT人材の平均年収は約598万円です。
これに対して、アメリカのIT人材の平均年収は非常に高く、約1,157万円と日本の約2倍に達しています。
このデータだけを見ると、日本のエンジニアの給料水準が低いと感じるのは自然なことかもしれません。
ただし、この調査では他のアジア諸国との比較も行われています。
それによると、日本の年収水準は主要なアジア諸国の中ではトップクラスに位置しており、一概に「安い」と断定することは難しい状況です。
国 | 平均年収 |
---|---|
アメリカ | 1,157万円 |
日本 | 598万円 |
その他アジア諸国 | 日本より低い水準 |
引用:経済産業省「IT人材育成の状況等について」より
興味深いのは、給与・報酬に対する満足度の調査結果です。
他産業との年収差が比較的小さい日本や韓国では、自国の給与水準に「満足していない」と回答する割合が他国より圧倒的に高い傾向が見られます。
これは、絶対的な給料額そのものよりも、他業種と比較した際の優位性が少ないことに不満を感じているエンジニアが多いことを示唆しています。
エンジニアの給料、平均はいくら?
エンジニアの給料が本当に安いのかを判断するためには、まず国内の平均年収と比較することが一つの指標となります。
国税庁の「令和5年民間給与実態統計調査結果」によると、日本全体の給与所得者の平均年収は390万円とされています。
一方で、エンジニアが多く属する「情報通信業」の平均年収は577万円です。
このデータから、エンジニア職は日本全体の平均よりも約190万円も高い水準にあることが分かります。
この数字を見る限り、「エンジニアの給料は安すぎる」という主張は、客観的なデータとは少し異なるようです。
情報通信業は、数ある産業の中でも特に給与水準が高い分野の一つです。
実際に、全産業の中で情報通信業より平均年収が高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」と「金融業・保険業」の2つしかありません。
産業 | 平均年収 |
---|---|
電気・ガス・熱供給・水道業 | 761万円 |
金融業・保険業 | 590万円 |
情報通信業 | 577万円 |
建設業 | 488万円 |
製造業 | 501万円 |
日本全体の平均 | 390万円 |
参照:国税庁「令和5年民間給与実態統計調査結果」より一部抜粋
したがって、国内の他産業と比較しても、エンジニアの給料は決して低いわけではなく、むしろ高い部類に入ると考えられます。
よりリアルな年収、中央値での比較
平均年収は、一部の高年収層によって数値が大きく引き上げられることがあるため、より実態に近い感覚を知るためには「年収中央値」を見ることが有効です。
中央値は、データを小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値のことを指し、多くの人の実感に近い数値とされています。
経済産業省の調査によると、日本のIT人材の年収中央値は535万円です。
これは、先ほど見た平均年収598万円よりは低いものの、依然として高い水準を保っています。
この平均値と中央値の差額である約63万円は、一部の非常に高い年収を得ているエンジニアが平均値を押し上げていることを示唆しています。
例えば、プロジェクトマネージャーやITコンサルタント、または最先端技術を扱う一部のスペシャリストなどは、年収1,000万円を超えることも珍しくありません。
このような高年収層の存在が、全体の平均値を引き上げる一因となっています。
そのため、もしあなたが自身の年収を評価する際は、平均年収だけでなく中央値も参考にすることで、より客観的に自分の立ち位置を把握できるでしょう。
年収中央値を見ても、エンジニアという職業が国内で十分に高い報酬を得られる仕事であることは明らかです。
代表的な職種、SEの年収水準
エンジニアと一括りにしても、その職種は多岐にわたります。
中でも代表的な職種であるシステムエンジニア(SE)の年収は、働き方によって大きく異なるのが特徴です。
一般的にSEは、システムの要件定義や設計といった上流工程を担うため、プログラマーよりも年収が高い傾向にあります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、システムエンジニア(業務用システム)の平均年収は550.2万円とされており、これは日本の平均給与を大きく上回る数字です。
さらに、SEの働き方には、顧客のシステム開発を請け負う「SIer」や、自社のシステム開発・運用を行う「社内SE」などがあります。
SIerは、元請け、二次請け、三次請けといった多重下請け構造の中に位置することが多く、商流が下になるほど年収は低くなる傾向があります。
一方で、元請けに近い大手SIerでは、年収1,000万円を超えるケースも少なくありません。
社内SEの平均年収は、500~700万円(経済産業省資料参照)と、こちらも高い水準です。
特にIT戦略の企画など、経営に近い上流工程を担う社内SEは、企業の利益に直接貢献するため、高い評価と報酬を得やすいでしょう。
このように、同じSEという職種であっても、所属する企業の業種や規模、担当する業務内容によって年収には大きな幅があることを理解しておくことが大切です。
なぜエンジニアの給料が安すぎと感じるのか
データ上は高い水準にあるにもかかわらず、なぜ多くのエンジニアは「自分の給料が安すぎる」と感じてしまうのでしょうか。
その背景には、主に3つの構造的な理由が考えられます。
1. IT業界の多重下請け構造
IT業界、特にSIer(システムインテグレーター)では、元請け企業が受注した案件を、二次請け、三次請けといった下層の企業へ再委託していく「多重下請け構造」が一般的です。
この構造では、各企業が中間マージンを差し引くため、実際に開発を担当する末端のエンジニアに届く報酬は大幅に少なくなります。
いくら優れたスキルを持っていても、商流の深い企業に所属している限り、正当な報酬を得にくいのが現実です。
2. スキルや経験の不足
エンジニアの給料は、実力主義の世界であり、スキルや経験が直接的に報酬に反映されます。
もし、習得している技術が古かったり、担当できる業務範囲が狭かったりする場合、市場価値は低く評価されがちです。
特に、誰にでもできるようなテストや運用・保守といった下流工程の業務ばかりを続けていると、スキルが伸び悩み、結果として給料も上がりにくい状況に陥ります。
3. 年功序列が残る企業の評価制度
IT業界には実力主義の企業が多い一方で、特に歴史のある大手企業や地方の中小企業などでは、いまだに年功序列の評価制度が根強く残っている場合があります。
このような企業では、個人の成果やスキルよりも勤続年数が重視されるため、若くて優秀なエンジニアが正当な評価を受けにくく、「頑張っても給料が上がらない」という不満につながります。
これらの要因が複合的に絡み合うことで、多くのエンジニアが自身の給料に対して「安すぎる」という感覚を抱くことになると考えられます。
エンジニアの給料が安すぎる状況を脱却する方法
- エンジニア年収400万のスキルレベル
- 確実なエンジニアの給料上げ方4選
- エンジニアで一番稼げる職種とは?
- エンジニアの給料安すぎ問題を解決する要点
エンジニア年収400万のスキルレベル
「エンジニアで年収400万円」という水準は、キャリアにおける一つの目安となります。
この年収レベルは、一般的にどのようなスキルや経験を持つエンジニアに相当するのでしょうか。
経済産業省が策定したITスキル標準(ITSS)を参考にすると、年収400万円台はレベル1からレベル2に該当すると考えられます。
- レベル1: 新人・初級者レベル。指示された作業を遂行できるが、まだ独力での業務遂行は難しい段階。
- レベル2: 上位者の指導のもとで仕事ができる若手人材レベル。一定範囲の作業であれば、独力で担当することが可能です。
具体的には、プログラミングの基礎知識を持ち、設計書に基づいたコーディングや単体テストなどを担当できるレベルが想定されます。
数年の実務経験を積み、特定の技術領域で基本的な業務をこなせるようになった段階といえるでしょう。
しかし、年収400万円台で停滞している場合、それはスキルが市場の求める水準に達していない、あるいは所属している企業の給与水準が低い可能性があります。
このレベルからさらに年収を上げていくためには、より高度なスキルを習得したり、キャリアパスを見直したりするなどの具体的な行動が求められます。
確実なエンジニアの給料上げ方4選
もし現在の給料に満足していないのであれば、受け身の姿勢では状況は変わりません。
ここでは、エンジニアが能動的に給料を上げていくための具体的な方法を4つ紹介します。
1. 資格を取得してスキルを客観的に証明する
資格は、自身のスキルや知識レベルを客観的に証明するための強力な武器になります。
特に未経験や経験の浅いエンジニアにとって、資格はポテンシャルを示す有効な手段です。
例えば、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験といった国家資格は、ITの基礎知識を体系的に有していることの証明になります。
また、AWS認定資格やCisco技術者認定(CCNA)などのベンダー資格は、特定の分野における専門性をアピールする上で非常に効果的です。
資格取得は昇進や給与交渉の材料になるだけでなく、転職活動においても有利に働きます。
2. 最新技術を学び自己学習を継続する
IT業界は技術の進化が非常に速いため、常に最新の動向を追いかけ、自己学習を続ける姿勢が不可欠です。
現在主流の技術も数年後には陳腐化してしまう可能性があります。
AI、クラウド、セキュリティといった需要の高い分野の最新技術をキャッチアップし、自身のスキルセットを更新し続けることで、市場価値の高い人材であり続けることができます。
休日に勉強会に参加したり、個人で開発プロジェクトを進めたりする努力は、必ず将来の年収に反映されるでしょう。
3. ポートフォリオを作成して実践力を示す
ポートフォリオ(作品集)の作成は、習得したスキルを具体的なプロダクトとして提示し、実践力をアピールするための最良の方法です。
履歴書や職務経歴書だけでは伝わりにくい、あなたの技術力、設計思想、問題解決能力を具体的に示すことができます。
例えば、Webサービスやアプリケーションを個人で開発し、そのソースコードをGitHubで公開することで、採用担当者はあなたのスキルを直接評価できます。
これは、学んだ知識をアウトプットする絶好の機会でもあり、技術の定着にもつながります。
4. 評価される環境へ転職する
いくら努力をしても、所属している企業の評価制度や給与水準が低ければ、年収アップには限界があります。
もし現在の職場で正当な評価が得られない、あるいは成長の機会が少ないと感じるなら、転職は非常に有効な選択肢です。
より上流工程を担える元請け企業や、成果主義を導入している自社開発企業、給与水準の高い外資系企業などに移ることで、年収を大幅に上げることが可能になります。
自身の市場価値を正しく把握し、キャリアプランに合った企業を選ぶことが鍵となります。
エンジニアで一番稼げる職種とは?
エンジニアとしてキャリアを積む上で、どの職種が最も高い収入を得られるのかは大きな関心事です。
経済産業省の調査データや各種転職サイトの情報を総合すると、特に高年収が期待できる職種として以下の2つが挙げられます。
- ITコンサルタント
- プロジェクトマネージャー(PM)
ITコンサルタントの平均年収は928.5万円、プロジェクトマネージャーは891.5万円と、他のエンジニア職種と比較して突出して高い水準にあります。
ITコンサルタントは、企業の経営課題をITの力で解決する専門家です。
システムの導入提案だけでなく、経営戦略そのものに深く関与するため、高度な専門知識とビジネスに対する深い洞察力が求められます。
その責任の重さと貢献度の高さが、高年収に直結しています。
プロジェクトマネージャーは、開発プロジェクト全体の責任者として、予算、品質、納期の全てを管理する役割を担います。
技術的な知見はもちろん、チームをまとめるリーダーシップや、顧客との折衝能力など、総合的なマネジメントスキルが不可欠です。
プロジェクトの成否を左右する重要なポジションであるため、高い報酬が設定されています。
これらの職種は、プログラマーやシステムエンジニアとして現場経験を積んだ後のキャリアパスとして位置づけられることが多く、一朝一夕でなれるものではありません。
しかし、将来的に大幅な年収アップを目指すのであれば、これらの上流工程の職種を視野に入れ、計画的にスキルと経験を積み重ねていくことが有効な戦略となります。
総括:エンジニアの給料安すぎ問題を解決する要点
✅エンジニアの平均年収は日本全体の平均より高い
✅海外、特にアメリカと比較すると日本の給与水準は低い傾向にある
✅給料が安いと感じる主な原因は多重下請け構造やスキル不足
✅年功序列の評価制度が残る企業では正当な評価を得にくい
✅平均年収だけでなく中央値も見ることでより実態に近い数値を把握できる
✅年収400万円台はITSSスキルレベル1~2に相当する若手層
✅給料を上げるにはスキルアップや自己学習が不可欠
✅資格取得はスキルを客観的に証明する有効な手段
✅ポートフォリオ作成で実践的な開発力をアピールする
✅現職での評価に不満なら転職で環境を変えるのが効果的
✅元請け企業や自社開発企業は年収が高い傾向
✅最も稼げる職種はITコンサルタントやプロジェクトマネージャー
✅上流工程の職種を目指すキャリアプランが年収アップへの近道
✅自分の市場価値を正しく理解し戦略的に行動することが重要
✅「給料が安すぎる」という現状は自身の努力と選択で変えられる
本記事では、エンジニアの給料が「安すぎ」と感じられる背景から、実際の年収データ、そして収入を上げるための具体的な方法までを多角的に解説しました。
データが示す通り、エンジニアの平均年収は国内の他業種と比較しても高い水準にあります。
しかし、多重下請け構造や個人のスキル、所属する企業の評価制度によって、収入に大きな差が生まれるのもまた事実です。
もしあなたが現在の給料に満足していないのであれば、それは決して「夢見すぎ」なのではなく、ご自身のキャリアと市場価値を客観的に見つめ直す良い機会なのかもしれません。
大切なのは、現状を嘆くだけでなく、次の一歩を踏み出すことです。
需要の高いスキルを学ぶ、資格を取得して専門性を証明する、あるいは正当に評価される環境へ転職するなど、年収を上げるための道筋は数多く存在します。
この記事で得た知識が、あなたの市場価値を正確に把握し、納得のいくキャリアプランを築くための一助となれば幸いです。
あなたの挑戦を心から応援しています。