「ゲーム会社はやめとけ」は嘘?人手不足の今がチャンスな理由

近藤輝優

プログラミング研究

在学中にWeb制作を学び、IT企業に就職。 キャリアスタート時は月100時間以上の残業がある労働環境に身を置くが、体調を壊してフリーランスになる。

ゲーム会社やめとけ」というキーワードで検索されたあなたは、ゲーム業界への就職や転職に興味を持ちつつも、多くの不安を抱えているのではないでしょうか。

ネット上では、ゲームクリエイターは「やばい」「使い捨て」にされるといった精神的に厳しい現実や、過酷な残業、終わらないバグ修正、そして高い離職率に関する情報が溢れています。

また、年収や休日、福利厚生といった待遇面への懸念や、そもそも就職が難しいのではないかという疑問、何歳まで働けるのかという将来性への不安もあるかもしれません。

自分はゲーム業界に向いている人なのか、どのようなスキルが求められるのか、そして本当にやりがいや達成感は得られるのか、その理由を知りたいと思っていることでしょう。

しかし、業界が抱える慢性的な人手不足という状況は、これらの懸念とは裏腹に、新たな可能性を生み出しています

この記事では、ネガティブな側面に光を当てるだけでなく、なぜ今がチャンスと言えるのか、その実情を多角的に解説していきます。

記事のポイント

  • 「ゲーム会社はやめとけ」と言われる具体的な理由
  • 人手不足が未経験者や転職希望者にとってチャンスとなる背景
  • ゲーム業界の年収や働き方などリアルな労働環境
  • 求められる人物像と仕事で得られる本当のやりがい

なぜ「ゲーム会社はやめとけ」と言われるのか

なぜ「ゲーム会社はやめとけ」と言われるのか

  • やばいと言われる精神的な理由と残業
  • 使い捨て文化と終わらないバグ修正
  • 高い離職率とシビアな年収事情
  • 期待しづらい休日や福利厚生の実態
  • そもそも就職が難しいという現実

やばいと言われる精神的な理由と残業

やばいと言われる精神的な理由と残業

ゲーム会社が「やばい」と言われ、精神的に厳しい職場だと考えられる主な理由は、厳しい納期設定とそれに伴う長時間労働にあります。

ゲーム開発の現場では、発売日やアップデートの配信日が厳格に定められており、プロジェクトを計画通りに進めることが絶対的な使命となります。

しかし、開発過程では予期せぬバグの発生や、より良い作品にするための急な仕様変更などが頻繁に起こります。

これらの問題に対応するため、スケジュールは常に圧迫されがちです。

特にプロジェクトの終盤、リリース前の「クランチタイム」と呼ばれる時期には、業務が極度に集中します。

データによれば、この時期の残業時間は月に50時間から80時間を超えることも珍しくなく、連日の徹夜作業が発生するケースも見受けられます。

近年では、2019年から施行された働き方改革関連法の影響もあり、業界全体で労働環境の改善が進んでいます。

例えば、ある調査ではゲーム制作・開発職の平均残業時間は2018年の45.3時間から2023年には24.4時間へと大幅に減少しました。

ただ、この数値はあくまで平均であり、繁忙期には依然として高い負荷がかかるのが実情です。

常に納期に追われるプレッシャーと、プロジェクトの成否が自身の働きに懸かっているという重圧が、精神的な負担を大きくする要因と言えるでしょう。

使い捨て文化と終わらないバグ修正

使い捨て文化と終わらないバグ修正

「使い捨て」という厳しい言葉が使われる背景には、プロジェクト単位での雇用形態や、絶え間なく発生するバグ修正の過酷さがあります。

ゲーム業界、特に開発部門では、特定のプロジェクトのために契約社員や業務委託として人材を集めることが少なくありません。

このため、プロジェクトが終了すると同時に契約も満了となり、安定したキャリアを築きにくいという側面が存在します。

また、バグ修正の業務は、ゲーム開発において避けては通れない、非常に根気のいる作業です。

バグとはプログラムの不具合のことで、これを放置するとゲームが正常に進行しなくなったり、最悪の場合はセーブデータが破損したりと、ユーザーの満足度を著しく下げてしまいます。

バグの原因特定は、時に非常に困難を極めます。

一つの原因を突き止めるために、何通りもの検証を繰り返し、原因が判明するまで昼夜を問わず作業に追われることもあります。

この地道で終わりが見えにくい作業が、開発者のモチベーションを削ぎ、「自分はただの修正要員ではないか」という無力感につながることがあります。

このような労働環境から、一部では「人材を駒のように扱う」といった印象が生まれ、「使い捨て」という言葉で表現されてしまうのかもしれません。

高い離職率とシビアな年収事情

高い離職率とシビアな年収事情

ゲーム業界は、他業界と比較して離職率が高い傾向にあり、これが「やめとけ」と言われる一因となっています。

厚生労働省の調査によると、日本の平均離職率が約15%であるのに対し、ゲーム会社の中には20%を超える企業も存在します。

会社名 離職率
日本の平均離職率 15.0%
ソニー・インタラクティブエンタテイメント 0%
任天堂 1.2%
バンダイナムコエンタテイメント 15.6%
スクウェア・エニックス 27.3%
コナミデジタルエンタテイメント 12.0%

引用:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」、東洋経済新報社「就職四季報総合版2021年版」

もちろん、任天堂のように極めて低い離職率を誇る優良企業もありますが、企業によっては人の入れ替わりが激しいのが実情です。

この背景には、前述したような長時間労働や業務のプレッシャーに加え、年収が業務量に見合わないと感じる人が多いことも挙げられます。

ゲームクリエイターの平均年収は約580万円と、日本の平均年収である約458万円を上回ってはいます。

しかし、これはあくまで全体の平均値です。

専門的なスキルが求められる一方で、特に若手や未経験からスタートする場合、年収300万円台からのスタートも珍しくありません。

過酷な労働環境に見合うだけの対価が得られていないと感じることが、業界を去る決断を後押ししていると考えられます。

期待しづらい休日や福利厚生の実態

期待しづらい休日や福利厚生の実態

働き方を考える上で、休日や福利厚生は非常に大切な要素ですが、ゲーム業界ではこの点においても不安視されることがあります。

特に休日は、プロジェクトの進行状況に大きく左右されるのが現実です。

多くの企業では完全週休2日制を採用していますが、納期が迫る繁忙期には休日出勤を余儀なくされるケースが少なくありません。

リリースが無事に完了すれば長期休暇を取得できる制度を設けている企業もありますが、常に安定してカレンダー通りに休めるわけではない、という点は理解しておく必要があります。

福利厚生に関しても、企業による差が大きいのが特徴です。

大手企業では住宅手当や育児支援など、充実した制度が整っていることが多いです。

一方で、中小企業やベンチャー企業では、福利厚生まで手が回っていない場合もあります。

ただし、ゲーム会社ならではのユニークな制度を持つ企業も増えています。

例えば、ゲームソフトの購入費用を補助する制度や、自社のゲームをプレイして特定の条件をクリアすると手当が支給される「ゲーミング手当」など、社員の「ゲーム好き」を応援する福利厚生は魅力的です。

就職や転職を考える際は、企業の規模だけで判断せず、具体的な休日取得率や福利厚生の内容を個別に確認することが、入社後のミスマッチを防ぐ鍵となります。

そもそも就職が難しいという現実

そもそも就職が難しいという現実

ゲーム業界への憧れを持つ人は多い一方で、「就職するのは非常に難しい」という現実があります。

特に、ゲーム開発の中核を担うプログラマーやデザイナーといった専門職は、高いスキルと実務経験が求められるため、未経験者がいきなり正社員として採用されるハードルは決して低くありません。

多くのゲーム会社の新卒採用や中途採用では、ポートフォリオ(作品集)の提出が必須となります。

このポートフォリオで、自身のスキルレベルやセンスを具体的に証明できなければ、面接にすら進めないことがほとんどです。

独学や専門学校でスキルを磨き、他人を納得させられるだけの質の高い作品を準備する必要があります。

また、ゲーム業界は転職や独立が比較的活発なため、スキルを持った人材がより良い条件を求めて流動しやすい傾向にあります。

このため、企業側も即戦力となる経験者を優先的に採用したいと考えるのが自然な流れです。

デバッガー(ゲームのテストプレイヤー)など、未経験からでも比較的挑戦しやすい職種もありますが、そこからクリエイター職へステップアップするには、さらなる努力と実績が求められます。

このように、華やかなイメージとは裏腹に、実力主義の厳しい世界であることが、就職の難しさにつながっています。

人手不足の今、ゲーム会社はやめとけではない

人手不足の今、ゲーム会社はやめとけではない

  • 慢性的な人手不足が転職のチャンス
  • 求められるスキルとキャリアは何歳まで
  • ゲーム業界に向いている人の特徴
  • 仕事で得られる大きなやりがいと達成感
  • 業界の高い将来性とキャリアパス
  • ゲーム会社はやめとけかを判断するために

慢性的な人手不足が転職のチャンス

慢性的な人手不足が転職のチャンス

これまで述べてきた厳しい側面とは裏腹に、現在のゲーム業界が抱える「人手不足」は、これから業界を目指す人にとって大きなチャンスとなり得ます。

経済産業省の調査によると、IT人材は2030年にかけて最大で約80万人が不足すると予測されており、ゲーム業界も例外ではありません。

市場がスマートフォンゲームやeスポーツの隆盛によって急速に拡大を続ける一方で、開発に必要な高度なスキルを持つ人材の供給が追いついていないのが現状です。

3Dモデリングやアニメーション、サーバーサイドのプログラミングなど、専門性の高いクリエイターやエンジニアは常に不足しています。

この状況は、企業側が採用のハードルを以前よりも柔軟にせざるを得ない状況を生み出しています。

つまり、十分なポテンシャルや学習意欲を示せれば、未経験者や経験の浅い人材であっても採用の可能性が以前より高まっているのです。

また、人手不足は従業員の待遇改善を促す要因にもなります。

優秀な人材を確保し、定着させるために、給与水準の引き上げや福利厚生の充実、働きやすい環境の整備に力を入れる企業が増えています。

これらの理由から、業界の厳しい側面だけを見て「やめとけ」と判断するのは早計かもしれません。

むしろ、需要が高い今だからこそ、スキルを身につけて業界に飛び込む絶好の機会と捉えることができるのです。

求められるスキルとキャリアは何歳まで

求められるスキルとキャリアは何歳まで

ゲーム業界で活躍するためには、職種に応じた専門スキルが不可欠です。

未経験から転職を目指す場合でも、希望する職種に関する基礎知識やスキルを身につけておくことが、採用の可能性を大きく左右します。

必要なスキルの例

  • ゲームプログラマー: C++やC#といったプログラミング言語の知識、UnityやUnreal Engineといったゲームエンジンの使用経験が求められます。
  • ゲームデザイナー(CG): Mayaや3ds Maxなどの3Dモデリングソフトや、Photoshop、Illustratorといったデザインツールのスキルが必要です。
  • ゲームプランナー: ゲームの企画力や仕様書を作成するドキュメント作成能力、そしてチームをまとめるコミュニケーション能力が大切になります。

キャリアを築く上で「何歳まで」という明確な年齢制限はありません。

20代や30代であれば、ポテンシャルを重視した未経験者採用の枠も多く存在します。

一方で、40代以上になると、未経験からの転職は難易度が上がります。

この年代では、即戦力となる専門スキルや、他の業界で培ったマネジメント経験などがなければ、採用は厳しいと言わざるを得ません。

しかし、スキルさえあれば年齢は関係ありません。

常に最新技術を学び、自身の市場価値を高め続ける意欲があれば、何歳からでもキャリアをスタートさせ、長く活躍し続けることが可能です。

年齢を気にするよりも、まずは具体的なスキル習得に向けた一歩を踏み出すことが重要です。

ゲーム業界に向いている人の特徴

ゲーム業界に向いている人の特徴

ゲーム業界は、単に「ゲームが好き」というだけでは務まらない厳しい世界ですが、特定の資質を持つ人にとっては、これ以上ないほど輝ける場所でもあります。

第一に、「モノづくり」そのものに情熱を持てる人です。

ユーザーを楽しませるために、細部にまでこだわり、妥協を許さずにクオリティを追求できる姿勢が求められます。

自分のアイデアや技術で、まだ世にない新しいエンターテインメントを生み出すことに喜びを感じる人は、この業界に向いていると言えます。

第二に、チームワークを大切にできる人です。

ゲーム開発は、プランナー、デザイナー、プログラマーなど、様々な専門家が集まって一つの目標に向かう共同作業です。

それぞれの意見を尊重し、円滑なコミュニケーションを取りながら、チーム全体の力を最大限に引き出せる能力は非常に価値があります。

第三に、粘り強さと探究心を持つ人です。

開発中には、解決困難なバグや技術的な壁に何度もぶつかります。

そうした場面でも諦めずに、根気強く原因を追求し、解決策を見つけ出すタフさが不可欠です。

また、ゲーム業界の技術は日進月歩で進化していくため、常に新しい情報をキャッチアップし、学び続ける学習意欲も成功の鍵を握ります。

これらの特徴に当てはまる人は、たとえ困難な状況に直面しても、それを乗り越える楽しさを見出し、ゲーム業界で大きく成長できる可能性を秘めています。

仕事で得られる大きなやりがいと達成感

仕事で得られる大きなやりがいと達成感

ゲーム業界の仕事は確かに厳しい側面がありますが、それを補って余りあるほどの大きな「やりがい」と「達成感」を得られる点が最大の魅力です。

最も大きな達成感を感じる瞬間は、やはり自分たちが長い時間をかけて作り上げたゲームが、無事にリリースされた時でしょう。

数々の困難やトラブルをチーム全員で乗り越え、一つの作品として世に送り出す喜びは、何物にも代えがたいものがあります。

エンドロールに自分の名前が流れるのを見た時、これまでの苦労が報われたと感じるクリエイターは少なくありません。

さらに、そのゲームをプレイしたユーザーから「面白い!」「感動した!」といったダイレクトな反応が届いた時の喜びは、この仕事ならではの醍醐味です。

SNSやレビューサイトを通じて、自分の仕事が誰かの心を動かし、楽しい時間を提供できていると実感できることは、次なる作品への大きなモチベーションにつながります。

また、最新の技術に常に触れられる環境も、クリエイターとしてのやりがいを感じるポイントです。

VRやAIといった最先端のテクノロジーを駆使して、誰も見たことのないような新しい表現や体験を創造していく過程は、知的な探求心を満たしてくれます。

これらの経験は、単なる労働の対価である給与以上に、働く上での大きな精神的報酬となるのです。

業界の高い将来性とキャリアパス

業界の高い将来性とキャリアパス

「ゲーム業界はやめとけ」という意見とは対照的に、業界の将来性は非常に明るいと考えられています。

国内のゲーム市場規模は過去10年間で約2倍に成長し、2兆円を超える巨大マーケットを形成しています。

この成長は、eスポーツの盛り上がりや、5G通信の普及、VR/ARといった新技術の登場によって、今後さらに加速していくと予測されています。

このような成長市場に身を置くことは、自身のキャリアにとって大きなアドバンテージとなります。

需要の拡大は、新たな雇用の創出と、そこで働く人材の市場価値向上に直結するからです。

ゲーム開発で培ったプログラミングスキルやデザインスキルは専門性が高く、業界内でキャリアアップを目指す際の強力な武器となります。

キャリアパスも多様です。

例えば、プログラマーとして経験を積んだ後、チームをまとめるリードプログラマーや、プロジェクト全体を管理するテクニカルディレクターへと進む道があります。

また、プランナーからディレクター、そして最終的にはプロジェクトの最高責任者であるプロデューサーを目指すことも可能です。

さらに、ゲームエンジンや開発ツールの知識は、ゲーム業界以外のIT分野や映像業界などでも応用が利きます。

将来的に別の業界へ挑戦したいと考えた際にも、ゲーム業界での経験は決して無駄にはなりません。

成長し続ける業界でスキルを磨くことは、安定したキャリアを築くための確かな土台となるでしょう。

総括:ゲーム会社はやめとけかを判断するために

総括

この記事では、「ゲーム会社はやめとけ」と言われる理由から、その裏にあるチャンス、そして業界の実情までを幅広く解説してきました。

最終的にゲーム会社で働くべきかどうかを判断するためには、ネガティブな情報とポジティブな情報の両方を踏まえ、自分自身の価値観と照らし合わせることが大切です。

以下に、本記事の要点をまとめます。

ご自身のキャリアを考える上での判断材料としてご活用ください。

  • 「やめとけ」と言われる背景には厳しい納期や長時間残業がある
  • 精神的なプレッシャーや終わりの見えないバグ修正も一因
  • プロジェクト単位の契約もあり「使い捨て」と感じる人もいる
  • 離職率は他業界より高い傾向にある企業も存在する
  • 年収は日本の平均より高いが業務量に見合わないと感じる場合がある
  • 休日出勤の可能性があり福利厚生は企業規模で差が大きい
  • 専門職への就職はポートフォリオが必須で難易度は低くない
  • 一方で業界は慢性的な人手不足であり採用のチャンスは広がっている
  • 人手不足は待遇改善の動きにもつながっている
  • 専門スキルがあれば年齢に関わらず長く活躍できる可能性がある
  • モノづくりへの情熱やチームワークを大切にする人が向いている
  • 粘り強さや学習意欲も成功には不可欠な要素
  • 自分が関わったゲームが世に出る達成感は非常に大きい
  • ユーザーからの直接的な反応が仕事のやりがいになる
  • 市場は成長を続けており業界の将来性は高い
  • 専門スキルを磨けば多様なキャリアパスが描ける

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。

ゲーム業界の厳しい現実と、それを凌駕するほどの大きな可能性を感じていただけたのではないでしょうか。

「やめとけ」という言葉の裏に隠された、またとないチャンスの存在に、あなたの心は今、少しでも動いているかもしれません。

大きな可能性があります。

未経験やスキルへの不安もあるでしょうがトライする価値は十分あると思います。